説明しよう。証券の世界は特にわかりやすいが、自分の顧客を持っている人は強い。顧客の持ち方にはいろいろなレベルがあるが、たとえば、証券業界で言えば、○○生命や××信託といった法人客と親しく取引していて、会社を移っても、顧客がこの人についてきて取引をしてくれるだろうというセールスマンには、直接的な価値がある。同じ証券の世界なら、大手の法人客には組織的であるがゆえの、ある種の「水くささ」があり、自分の移動とともに連れ回すのは難しいかもしれない。
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大法人よりも金額は小さくても、個人の資産家や△△学園といった小組織のトップと、個人的な関係を持っているセールスマンの方が、大きな価値を持っていることがあり得る。一定以上の読者を持っている作家は多くの出版社で本を出すことができるし、視聴者を惹きつけるタレントが複数のテレビ局から引っ張りだこになるのと、同様な原理だ。客の持ち方、つまり、親しさの度合いと数は、人によってそれぞれだ。私の知り合いで、五〇歳を過ぎてから金融業界の外資系の会社に二度マネージャー・クラスの仕事で転職した先輩がいる。彼は、類稀なコミュニケーション能力と対人スキルを持っているが、彼の場合、動かせる資金を持ってついてくるというほどの深い結びつきの客を持っているわけではない。主な法人顧客の財務部長・役員クラスを中心に、「会いたい」といえば、時間を作ってくれる過去の取引相手が、何百人かいて、この関係が継続的にメンテナンスされていることが、彼の強みである。