正規・非正規雇用の間の移動確率が、〇四年のまま推移すると仮定して、一〇年後に非正規雇用のシェアが、労働市場全体のどの程度を占めるかを予測してみた。私の試算では、それは現在の三〇%から四〇%へと上昇することになる。この予想は、〇四年までのデータをもとにしているが、その後、非正雄雇用への移動確率がさらに高まる傾向にあることから、事態は若年層にとってより厳しいものになると予想される。若年層が、何らかの理由で正規雇用から非正規雇用へ移動した場合、そこから抜け出したいと思ってもなかなか抜け出せない傾向が強くなっている。
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こうした状態を経済学では「ヒステレシス効果」と呼んでいる。もともとは、工学的概念であり「スイッチをオンからオフにした時にある物質の状態が変化した後、再びスイッチをオンにしても元には戻らない状態」を指して用いられる。ここでの例だと、「仮に景気が悪くなって若者が正規雇用から非正規雇用に移動したとする。景気が元に戻ったとしても、この若者が正規雇用に移ることが困難な状態」がヒステレシス効果ということになる。これまでの分析結果は、若年層におけるヒステレシス効果が強まっていることを示している。その背景には、それなりの理由が存在しているはずである。若者がそこから抜け出そうと努力しても難しいということは、そうした努力を拒む大きな力なり、流れが日本経済にあるということに他ならない。